【中小企業向け】経理は一人にできる?一人経理に潜むリスクと解決法

【中小企業向け】経理は一人にできる?一人経理に潜むリスクと解決法

経理を一人に任せたいけど正直不安…」
「経理の仕事を効率化する具体的な方法はなんだろう?」

中小企業の経理担当を減らすことについてお悩みではありませんか?

やみくもに経理担当を減らしてしまうと、そのプレッシャーやストレスに耐えきれずに休職や退職が発生する恐れがあります。しかし、人件費の存在は無視できません。

ITデザイナー

人件費を減らせるなら、工夫をしたいところ。

本記事では一人に経理を任せることのリスクを再確認しつつ、経理担当者にあてる人件費を削減する方法について解説します。

この記事のまとめ
  • 一人経理の場合、経営者視点では「ミス発見が難しい」「不正に気づきにくい」「退職等への対応が困難」というリスクがある
  • 一人経理の場合、経理担当者視点では「相談できる相手がいない」「長期で休めない」「やめにくい」というリスクがある
  • 経理担当を一人にするには「既存業務の見直し」「外注」「会計システムの導入」などの工夫が必要
目次

プレッシャーが大きい中小企業の一人経理

プレッシャーが大きい中小企業の一人経理

中小企業の一人経理担当者は、さまざまな業務を一手に担うため、常に高いプレッシャーに晒されることになります。まずは経理の概要についておさらいしておきましょう。

経理の業務や繁忙期について

中小企業の一般的な経理業務をまとめると次のようになります。

日常的な業務決算業務(月次、四半期、年次)
日々の仕訳入力請求書や領収書の管理給与計算税務申告決算書類の作成法人税・消費税の申告各種財務諸表の作成

特に年度末や決算期、確定申告時期は繁忙期でとても忙しく、長時間労働やストレスが集中する時期です。日常的な業務を行いながら決算業務にも取り組むため、高いスキルと集中力が求められます。

これらの業務を一人でこなすことは可能なのでしょうか。続いてはより具体的に、一人経理のリスクを経営者視点・担当者視点から考えていきましょう。

【メリットだけじゃない】中小企業の一人経理で経営者が負うリスク3選

【メリットだけじゃない】中小企業の一人経理で経営者が負うリスク3選

中小企業の経理を一人で担当することで人件費を抑えられるほか、自社の財務状況をリアルタイムで把握しやすくなるというメリットがあります。

しかし、経営者としては以下の3点においてリスクがあることを知っておきましょう。

リスク① ミスの発見が難しい

経理を一人で担当する場合、ミスの発見が難しくなります。同じ担当者が継続的に作業を行うことになるので、自分のミスに対する客観性が失われやすいのです。

例えば、仕訳の際の数字の転記ミスや勘定科目の誤分類などは、作業者本人には気づきにくいでしょう。また、相互チェックする同僚がいないため、そのミスが長期間見過ごされるおそれがあります。

このような状況は、最終的に財務諸表の信頼性を損ない、場合によっては税務調査などで重大な指摘を受けるリスクにもつながります。

リスク② 不正に気づきにくい

また、不正を発見することが非常に困難になるでしょう。経理を一人で行っているので、担当者が悪意を持って会計データを操作しても、それを発見するメカニズムがほとんどありません。

特に中小企業では経営者が日常的な会計処理に立ち入らないことが多く、不正が起こりやすい環境となります。もしも経費の私的流用や帳簿の改ざんがあった場合に、どれだけ早く気付けるかが重要です。

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経理の不正を放置することは、企業の財務的健全性を脅かします。今後の経営に大きな影響が及ぶことは言うまでもありませんね。

リスク③ 急な退職・休職への対応が難しい

さらに、急な退職や長期休職は企業にとって深刻な経営リスクとなります。

経理担当者が突然いなくなると、企業の生命線とも言える財務業務が完全に止まってしまいます。事務手順や会計システムの操作方法が属人化されていると、他の社員が業務を替わることは極めて難しいでしょう。

経理を一人で行うことのプレッシャーはとても大きいです。担当者が不安やストレスから体調不良を引き起こさないために、経理の業務改善を行ったり、担当者の心をケアしたりなどの工夫を施さなければなりません。

具体的な解決方法については、後述の「【解決策】中小企業の経理担当を減らすためには?」をご覧ください。

【やはりしんどい?】中小企業の経理を一人で担当するときのリスク3選

【やはりしんどい?】中小企業の経理を一人で担当するときのリスク3選

続いては経理担当者の視点から、一人経理のリスクを考えてみます。「一人だから気楽にできるだろう」と油断していませんか?しんどい部分もあることを事前に理解しておきましょう。

リスク① 相談できる相手がいない

経理担当が一人なので、判断に迷う会計処理や新しい会計基準について、社内で相談できる相手がいません。自分の判断が正しいかどうか不安になってもアドバイスを得られないことは、大きな心の負担となります。

また、専門知識の共有やスキルアップのための意見交換をできないため、孤独感や情報不足によるストレスを抱えやすくなります。法改正などの新しい情報は自分から勉強する、という姿勢も欠かせません。

リスク② 長期では休めない

経理を一人で担当する場合、長期休暇を取ることは事実上できません。会計業務は日々の処理が連続しているため、数週間休むことは企業の財務運営に重大な支障をきたします。

数日間であれば休めるかもしれませんが、休暇中に処理できていない業務は帰任後に多く積み残され、かえって大きな負担となります。そのときだけ別職員に手伝ってもらうという方法を取ったとしても、最終チェックは自身で行う必要があるのであまり意味がありません。

「長く休めない」「休み明けがしんどい」という環境は、有給休暇や病気休暇、家族の看護休暇などの与えられた福利厚生を十分に行使できず、長期的には心身の健康を損なうリスクすらあるのです。

リスク③ やめたいときにやめられない

転職や退職を望んだとしても、やめたいタイミングで簡単にやめられないストレスがあります。特に経理業務が属人化している中小企業では、以下の流れを踏まないとやめられないこともあり、採用のスピード感次第ではかなりの長期戦となります。

  1. 「やめたい」と伝える
  2. 新しい職員を採用し、経理担当の後任として配属する
  3. 後任者に事務を引き継ぐ
  4. 退職する

経理には月次や年次業務があることは先に述べたとおりです。文字や言葉での説明が難しいこれら業務を、「一度は後任者に見せながら引き継ぎしてほしい」と頼まれたらいつやめられるのでしょうか。

【解決策】中小企業の経理担当を減らすためには?

【解決策】中小企業の経理担当を減らすためには?

人的ミスや不正、経理担当が長期で休めないリスクを抑えて中小企業の経理を一人にするには、どのようにしたら良いのでしょうか。中小企業の経理を一人にするための具体的な解決方法を3つ紹介します。

① 業務の洗い出し・しくみの見直し

まずは業務の徹底的な洗い出しとプロセスの見直しを行いましょう。慣例として残っているけど、実は不要な作業が入っていませんか?

以下の3ステップにより、経理未経験でも理解できる業務フローを作れます。

  1. 現在の経理業務を工程ごとに書き出す
  2. 属人的な作業や非効率な手順を特定し、改善する
  3. マニュアル化できる作業は明確な手順書を作成する

明確なマニュアルがあれば、経理担当者は引き継ぎの不安やプレッシャーが軽くなりますし、経営者は急な退職に備えることもできますね。

経理担当者の心理的負担を軽減してそもそも退職させない環境や、万が一退職しても会計業務に支障が出ない環境を整備しておくことが、中小企業の経理担当を減らすために必要なのです。

② アウトソーシングの活用

経理業務のアウトソーシングは、中小企業の一人経理を実現するための効果的な方法です。会計事務所や経理代行サービスを活用することで、専門知識を持つ担当者に業務をまるっと任せられます。

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経理の専門家に委託することで、最新の会計基準や税法改正にも常に対応可能となり、経理担当の負担を減らしながら財務管理の質も向上させることができるのです。

相応のコストは必要ですが、経理担当者を増やす人件費よりはコストが抑えられます。ミスや不正リスクを減らせる・そもそも退職や休職が発生しない点を考慮すると有効な選択肢ではないでしょうか。

経理のすべてを外注するのか、一部のみ外注して自社担当者の負担を減らすのか。経済事情や必要性に応じて検討できるので、中小企業にとって心強い味方となるでしょう。

③ 会計システムの導入による業務の自動化

AI技術を取り入れた会計システムを導入することで、経理担当者が一人であっても負担が少ない職場環境にできます。

例えば、経費精算業務を効率化できる「マネーフォワードクラウド経費」には以下のような特徴があります。

  • 連携したクレジットカードの明細データを自動取得
  • 領収書の撮影だけで適切な費用科目を自動判定
  • スマホアプリもあるのでスキマ時間に対応可能
  • 電子帳簿保存法に対応

また、『毎月の請求業務を約80%削減する』と謳われている「請求管理ロボ」には以下のような特徴があります。

  • 請求書業務から「エクセル」「紙」がなくなる
  • 代金回収手段の提供や、入金消込の自動化による未収対策
  • 与信審査から回収まで、請求業務をまるなげ
  • 導入から3か月間は伴奏支援型サポートあり(有償)

これらの会計システムでは、AI-OCRによるデータ化によって、手作業による入力ミスや経理業務の属人化リスクを減らします。また、リアルタイムでの財務分析が可能となり、経営判断の迅速化にも貢献するのです。

中小企業の経理を一人にするためには、AIありきの会計システムが欠かせません。業務別のおすすめ会計システムは以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひこちらも参考にしてください。

【まとめ】工夫次第では中小企業の経理を一人にできる!

【まとめ】工夫次第では中小企業の経理を一人にできる!

中小企業の経理を一人にすることで人件費をカットできる一方、「ミス発見が難しい」「不正に気づきにくい」「退職等への対応が困難」という経営者視点のリスクが発生します。

一人にされた経理担当者としても「相談相手がいない」「長期で休めない」「やめにくい」というデメリットがあります。

一見すると、経理担当を一人にすることは困難のように感じてしまったかもしれません。そこで本記事では、中小企業での一人経理を実現するために以下のような工夫を紹介しました。

  • 既存業務の見直しによる脱・属人化
  • 外注によるミスや不正の軽減
  • 会計システムを導入して経理担当者の負担解消
ITデザイナー

本記事を参考にしながら、今できることから少しずつ取り入れてみてください。

当サイトでは、ITストラテジストと中小企業診断士のダブルライセンスを持つ現役コンサルタントが、中小企業のバックオフィス改革や社内の業務効率化について解説しています。ぜひ他の記事もご覧ください。

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